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ふーどばんくOSAKAの挑戦 その1 |特集

食を通じて社会をつなぐ活動

  ふーどばんくOSAKA 理事長 赤井 隆史さん

ふーどばんくOSAKA 赤井隆史 理事長

まだ安全に食べられるのに捨てられる食品がたくさんある。一方で、食べ物の支援を必要としている人がいる。この両者をつなぐものとして、「フードバンク」への注目が高まっている。今回、大阪府にある「認定NPO法人ふーどばんくOSAKA」(以下、「ふーどばんくOSAKA」と表記)を訪れ、その活動を取材した。

1.フードバンクとは

まだ安全に食べることができるにもかかわらず、さまざまな理由で市場に出せずに捨てられている食品の量は、日本全体で612万トン(2017年度)にもおよぶ。国民一人あたり、毎日お茶碗1杯分のごはんを捨てている計算となる。

フードバンクとは、文字通り訳すと「食料銀行」を意味するが、フードバンク活動とは食品ロスの削減と困窮者支援の担い手として、まさに環境問題と社会福祉に取り組む活動である。食品関連企業や農家、個人などから賞味期限内でまだ食べられるのに流通できなくなった食品の提供を受け、食べ物に困っている人や施設などに無償で配布する活動を行っている。

2.ふーどばんくOSAKA設立の経緯と活動理念

ふーどばんくOSAKAは、2012年11月に設立、2013年4月より大阪府下で初めてとなるフードバンク活動を開始している。その設立の経緯について、同法人理事長の赤井隆史さんにお話をうかがった。

「フードバンクについて知ったのは、2011年の部落解放研究全国集会になります。この中で、栃木県におけるフードバンクの取り組みについて紹介があり、大変感銘を受けました。このような社会貢献活動が大阪でもできないだろうか?と考え、検討を開始しました。

まったくゼロからのスタートでしたが、東京都の『セカンドハーベスト・ジャパン』や兵庫県の『フードバンク関西』といった先行のフードバンク団体に指導を仰ぎ、実際に作業現場に同行するなどしてノウハウを吸収しました。

活動のためには、倉庫や大型冷蔵庫、冷凍庫が必要になりますが、食肉産業の関係者からの紹介で堺市にある大阪食品流通センターを拠点として確保でき、堺市などの協力も得ることで、2013年4月にスタートを切ることができました。

始めるにあたってセカンドハーベスト・ジャパン代表のマクジルトン・チャールズさんから言われたのは、『余ったからあげる』という発想で受け取ってはダメということです。日本人は無償提供というと、提供する側からの恩恵にあずかる(『してあげる。してもらう。』)と捉えがちですが、本来、製造者は食材を最後まで有効活用する責務を負っています。フードバンク団体は、十分に安全でありながらさまざまな理由で市場に流通しなかった食材を、自分たちの持つ情報を駆使することで食料支援が必要な人たちにつなぐことにより、製造者の責務を果たすことにも貢献するというWIN-WINな関係、対等な立場にあるということを曲げてはいけないということです。

このため、食品提供団体とは、必ず事前に契約を取り交わすことにしています。フードバンク側は、提供品を販売しない、賞味期限を守る、提供団体のステイタスを守る(落とすことはしない)ということを約束する一方、提供側も法令に適合した安全な食品を提供する、といった内容です。

設立当時は、フードバンクの社会的な認知もまだ低く、企業側も不安はあったと思いますが、最初からこのように高いレベルの契約としたことは、今振り返ると非常に良かったと思っています。

契約書の中には、提供品がどのように活用されているか知っていただくため、『1年に1回、ボランティアに参加してください』という条文もあります。実際に現場を見ていただくと、『こんな施設に提供しているのか。提供して良かった。』と、社会貢献を実感していただけます。

学生ボランティアなど若い方にも活動に参加してもらっていますが、子どもたちの境遇に触れ、実際に子どもたちに喜んでもらうという体験は、社会への貢献感、『感動』をリアルに感じてもらっていると思います。

設立から7年が過ぎ、取扱量も大幅に増えて急速に発展していったと感じますが、一方で、子ども食堂が最後のセーフティネットとなっている子どもの貧困、女性一人親の厳しい状況など、活動によって深刻な社会的な課題もみえてきました。

本来、食品ロスや貧困問題がなくなりフードバンクの必要がない社会が理想ですが、ニーズがある以上はフードバンクを通じて、人と人の架け橋となり、人権のまちづくり、社会福祉の増進に貢献していきたい。『食べる』ことは、誰もが行うことであり、誰もが何かしらの関係を持っているといえます。ぜひ、大阪同企連の皆さんや、食品関係以外の皆さんには、フードバンクという活動、あるいは食品ロス、食料支援を必要としている人びとがいるという現実を見て欲しい、関心を持って欲しいと思います。」

お話から、フードバンク活動は、提供元、提供先の関係者相互の強い信頼関係のもとに成り立っている仕組みであることが理解できた。

国レベルでは、2015年4月に生活困窮者自立支援法、2019年10月に食品ロス削減推進法が施行され、困窮者支援(社会福祉)、食品ロス削減(環境問題)という2つの問題への取り組みがより一層求められている。これらに取り組むフードバンク活動は、今後ますます社会的な要請が強くなっていくものと感じる。

 

認定NPO法人ふ―どばんくOSAKAの紹介

住  所:堺市東区八下町1-112(大阪食品流通センター内)

基本理念:「もったいない」をありがとうに変える

設  立:2021年11月

 

(2022/03/29)