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「忘れられる権利」とは |ご存じ?Q&A

「忘れられる権利(right to be forgotten)」とは、インターネットにおけるプライバシーの保護のあり方として登場した新しい権利で「個人が個人情報などを収集した企業等にその消去を求めることができる権利」のことです。
インターネットの掲示板やブログ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)において、プライバシー侵害や誹謗中傷、名誉毀損に苦しむ人が後を絶たたないことから、プライバシー保護のための新しい権利の概念として生まれました。     インターネットでは各種の個人情報が永年消えずに残るため、適切な期間を経た後にまで情報が残っている場合、これを削除や消滅させる機能があるべきとする考え方に基づいています。

「忘れられる権利」を認めたのは、2011年のフランス女性らの訴訟で「過去の写真の消去」をインターネットサービスプロバイダに検索からの削除を求めた判決が最初でした。EU議会も「EUデータ保護規則」改正案を2014年に可決し「忘れられる権利」が明文化されました。
しかし、EU内でも、権利を承認する動きのある一方、インターネットでの検索結果に特定の情報が表示されないようにする措置を安易に認めると、情報発信者の「表現の自由」や情報受領者の「知る権利」を侵害する可能性があることから、既存の権利とのバランスに慎重な適用が必要である、との指摘がされています。

日本においては、インターネットサービスプロバイダが「プロバイダ責任制限法」に従ってウェブサイトの削除要請に自主的に応じており、問題が顕在化しにくい状況です。自主的な削除要請ができなかった場合には司法による解決で、既存のプライバシー権の枠組みの延長で判断されています。

今後は、インターネット上に公開された個人情報を保護するにあたって、既存の枠組みでどこまで被害者の救済ができるのか、プライバシーの保護と表現の自由をいかなる基準のもとでバランスさせるのか、さらに踏み込んだ議論が期待されます。

(2017/08/02)