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「働き方改革関連法」とは |ご存じ?Q&A

「働き方改革関連法案」が2018年6月29日の参院本会議で可決・成立しました。政府与党は「70年におよぶ労働基準法の歴史的な大改革」と、当該国会の最重要法案と位置づけていました。この法律は、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する「働き方改革」を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保などの措置を講ずることを目的としています。

具体的内容は?
次の7項目が挙げられています。
1 残業時間の上限規制
2 有休取得の義務化
3 勤務間インターバル制度の普及
4 割増賃金率の猶予措置廃止
5 産業医の機能強化
6 同一労働同一賃金
7 高度プロフェッショナル制度の創設
当初は「裁量労働制の対象範囲拡大」も含まれていましたが、現行の裁量労働制が長時間労働を助長しているとの批判が多く、この法案からは削除されています。

何が変わるのか?
昨今、「過労死」との言葉が日本人の働き方を揶揄するものとして世界に広まるなか、日本企業は生産効率の向上が求められています。さらに、これからの人口減の局面において、就労人口の維持には女性や高齢者の就労促進を欠かすことができず、そのためにはフレキシブルな労働形態を創出していかなければなりません。

この「働き方改革」は、働かせすぎにブレーキをかける側面を持つ一方で、長時間労働が困難な(子育て中や要介護者を家族に持つ)労働者の就業継続に道を拓くことになります。また、高度プロフェッショナル制度として、高度な能力を労働者には、能力や成果に応じた相応の対価(対象者は年収1,075万円以上)を支払うことで、労働者個人の裁量によって労働時間を決めることができるようになります。

労働者にとっての懸念は?
従来の労働基準法では、労使間で合意があれば時間外労働の上限を何時間にでも設定できましたが、「働き方改革関連法」施行後は、三六協定で設定する時間外労働には年間720時間(単月では100時間)の上限が課されます。過労死防止のために設けたルールですが、過労死ライン(月80時間)を超えた設定が容認されています。また、高度プロフェッショナル制度の該当者は、労働者総数の4%程度ということですが、将来的には基準の引き下げが行われるのでは?との懸念も挙げられています。

(2019/09/02)