シリーズ

「パリ協定」とは |ご存じ?Q&A

スペインのマドリードで開かれていた、気候変動に関する国際連合枠組条約(下段ことばの解説1)第25回締約国会議(COP25)が2019年12月15日に閉幕しました。若者たちの盛り上がりや、また日本の取り組みへの対応にも注目が集まることになり、気候変動問題への関心が一気に高まっています。
このCOP25では、一部積み残されていたパリ協定の運用ルール作りが焦点のひとつでした。
パリ協定は、2015年12月12日、フランスのパリで197カ国が参加する第21回締約国会議(COP21)(下段ことばの解説2)で採択されました。この協定は、1997年第3回締約国会議(COP3)で採択された京都議定書に代わる、2020年以降の温室効果ガス排出削減のための新たな枠組みとなります。
パリ協定の合意事項の中で特に重要なのは、温暖化の悪影響への懸念が世界的に高まるなかで「世界の気温上昇を産業革命前から2度未満に抑える」という目標を国際社会が決めたことです。この目標達成のために、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを今世紀後半に排出ゼロにする脱炭素化社会・経済のビジョンを示しました。国際社会が、化石燃料に依存した現在の社会・経済のあり方を大きく変えて、温室効果ガスを排出しない社会・経済への転換をめざすということでもあります。
そのために、途上国を含むすべての締約国に排出量目標の設定と定期的な見直しを求めています。また途上国の対策を支援するためには基金を設立し、先進国だけでなく、その他の国に対しても自発的な資金供与を促しています。
京都議定書では、先進国が世界の主要排出国だったために、先進国だけに温室効果ガスの排出削減義務を課していました。しかし、「削減義務を負う先進国」と「負わない途上国」という枠組みは、経済発展に伴う途上国の排出量の増加という現実の変化にそぐわなくなってしまいました。それゆえにすべての締約国が参加するパリ協定は歴史的な合意といわれています。
今回のCOP25では、米国の協定離脱に続き、パリ協定の詳細な運用ルールについては合意に至らず、温暖化対策をめぐる国際協調の難しさを印象付けることになりました。
今、直面する気候変動の激しさを前にして、将来世代の担い手たちが発する声は、右往左往する私たちに活を入れる声のようにも聞こえてきます。

(ことばの解説1)気候変動に関する国際連合枠組条約は、1992年にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された、環境と開発に関する国際連合会議において、採択された地球温暖化問題に関する国際的な枠組みを設定した環境条約です。
(ことばの解説2)締約国会議(COP:Conference of Parties)は、気候変動に関する国際連合枠組条約を締結した国(締約国)が、毎年集まって温暖化対策を進めるための国際的なルールを交渉します。

(2019/12/27)