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「ブラック・ライブズ・マター」とは |ご存じ?Q&A

ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter 以下「BLM」という)は、2020年5月、ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官から暴行を受けて死亡した事件に端を発し、世界的に広がった抗議運動の中で多く使われている表現です。

元々この「BLM」(黒人の命は大切)は2012年2月にフロリダ州で黒人少年が白人警官に射殺された事件を機に、SNS上で現場の動画やハッシュタグが拡散され、抗議の輪が広がった際に象徴的に使われたもので、2014年には7月にニューヨークで、さらに8月にはミズーリ州ファーガソンで、いずれも白人警官の過剰な暴力や銃撃による黒人の死亡事件が発生、その後ファーガソンで行われたデモ行進で「BLM」は世界的に認知されるようになりました。

日本語訳としては当初の「黒人の命も大切だ」について異論・批判が生じたことを受け、「黒人の命を守れ」、「黒人の命を軽視するな」、「黒人の命は大切」などの修正・意訳が行われました。

「BLM」の波は映画の世界にも。マーガレット・ミッチェルのベストセラー小説を映画化した「風と共に去りぬ」は1940年のアカデミー賞で作品賞など主要9部門を受賞した米映画史上有数の大ヒット作ですが、全米で人種差別への批判が強まったことを受け、ネットでの配信が一時停止されました。その後「この映画は南北戦争で奴隷制を維持しようとした南部を美化しており、奴隷制の恐ろしさを伝えてはいない」などと解説した動画を本編前につけた上で、配信が再開されました。

またコロンブスや奴隷商人のコルストン、探検家ジェームズ・クック、リンカーン、チャーチル、ガンジーなどの銅像が人種差別と結びつけられ、破壊、撤去など世界各地に拡がることにもつながりました。

さらにアメリカ合衆国における新型コロナウイルス感染症に関しても、多くの研究結果によると、人種別の感染者数、死亡者数は、すべての年齢層において、黒人やラテン系、ヒスパニック系のほうが白人に比べて高いことが判明しており、これも「BLM」の波を推進することとなりました。

2020年に世界的なうねりをもたらした「BLM」は、黒人の権利侵害のみならず広い意味での多様性の尊重につながる抗議活動の象徴として、今後も記録・記憶されることになるでしょう。

(2021/10/11)