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「アウティング」とは |ご存じ?Q&A

アウティングとは、英語で「暴露する」という意味を持つことから、本人の了解を得ることなく、本人が公表していない個人情報、例えば性的指向(どの性を好きになるか)や性自認(自分の認識する性)などを第三者に暴露する行為を表す言葉として使用されています。

関連する言葉に「カミングアウト」がありますが、カミングアウトはこれまで誰にも言ってこなかった性的指向や性自認を、本人の意思によって公表することです。

アウティングが世間に知られるようになったきっかけは、2015(平成27)年、大学院に通っていた男子学生が、ゲイであることを同級生に暴露され、自殺する事件が起きたことでした。2016(平成28)年、亡くなった学生の遺族は大学に対して対応の責任を追及する裁判を起こしましたが、2019(令和1)年2月27日、東京地裁は訴えを棄却しました。2020(令和2)年11月25日、東京高裁も遺族側の請求を棄却しましたが、アウティングについては「人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害するものであり、許されない行為であることは明らか」と言及しています。

この大学の所在地である東京都国立市では、2018(平成30)年4月1日に「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」が施行されました。市内在住のLGBT当事者からの意見を踏まえ、そして、この条例にはアウティングの禁止が盛り込まれています。

2020(令和2)年6月に「改正労働施策総合推進法」(通称「パワハラ防止法」)などが施行され(中小企業は2022(令和4)年4月施行)、企業にはパワーハラスメントの防止対策を講ずることが義務づけられました。日本ではこれまで、LGBTに関する差別やハラスメントの禁止に関しては、2017(平成29)年の男女雇用機会均等法に基づく改正セクハラ指針において、同性に対するものや性的指向、性自認にかかわらずセクハラの対象となることが明記されていましたが、この「パワハラ防止法」においては、性的指向や性自認に関する情報は機微な個人情報であり、本人の了解を得ずに他の労働者に暴露するアウティングは、同法で提示した6つのパワハラの代表的言動類型の一つである「個の侵害」にあたることが明記されました。

また、三重県は2020(令和2)年6月3日、LGBTへの差別を禁止する条例を制定し、アウティングの禁止を都道府県で初めて盛り込む方針を決め、2021(令和3)年4月1日より施行されています。

このように、アウティング禁止を明文化する自治体が今後増えるのではないかと考えられています。

(2022/12/23)