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「婚外子差別」とは」 |ご存じ?Q&A

「婚外子」とは、制度的な結婚をしていない「未婚の母」から生まれた子どものことです。
今日の日本社会の重要課題の一つが少子高齢化問題です。「少子化」を語るとき婚外子差別がなければ、もっと女性は子どもを産みやすいのではと指摘されてきました。たとえば、「できちゃった婚]という言葉があります。この言葉の背景には、「子どもを産むなら何が何でも結婚しなければ」「子どもを婚外子にしてはならない」「未婚の母は不道徳、世間体が悪い」という婚外子と未婚の母への差別的な社会意識があるからといえます。
しかし、現在の日本社会のライフスタイルは変化しており婚姻、家族の形態は多様化し、その在り方に対する国民の意識も多様化しています。婚外子出生率は2.2%前後あるといわれ、欧米諸国に比べると極めて低い出生率ですが増加傾向にあるといえます。
その中にあって民法900条(法定相続分)では、婚外子の相続を「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。但し、嫡出でない子の相続は、嫡出である子の相続分の二分の一」と規定されていたため、この規定が合憲か違憲かが裁判で争われてきました。
今までの、この規定を合憲とする意見は、規定の立法理由を、法律上の配偶者との間に出生した嫡出子の立場を尊重するとともに、被相続人の子である非嫡出子の立場にも配慮したものです。すなわち、非嫡出子に嫡出子の二分の一の法定相続分を認めることにより、非嫡出子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整をはかったものです。民法が法律婚主義を採用している以上、その立法理由には合理的な根拠があるとされてきました。
一方、違憲とする意見は、家族生活における個人の尊厳において、出生について何の責任も負わない非嫡出子をそのことを理由に法律上差別することは、婚姻の尊重・保護という立法目的の枠を超えるものであるとしています。
こうした中、2013年9月4日、最高裁は、裁判官14名全員一致で婚外子の相続分差別規定について、こうした社会情勢、立法の前提とする事実が変化したことを受けて、本件規定を違憲と判断しました。
今回の最高裁判断までには、東京高裁1993年の決定がはじめて違憲を判断してから20年、最高裁1995年の判決が本件規定を合憲と判断してから18年、長い間差別に苦しんできた人たち、子どもを大切にしたいと思ってきた人たちにとって待ちに待った判断でありその意義は大きいといえます。この最高裁での違憲判断を受けて、2013年12月5日、民法の一部を改正する法律が成立し、嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました。(同年12月11日公布・施行)

(2014/12/02)