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「障害者差別解消法」とは |ご存じ?Q&A

 障がい者への差別の解消を推進し、分け隔てのない共生社会の実現をめざす観点から、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が、2013年6月19日に成立し、2016年4月1日に施行されます。
我が国では、2011年の「障害者基本法」改正で障がい者への「差別の禁止」が定められましたが、行政機関等や民間事業者による差別的取扱いの禁止行為や差別解消のための具体的な対応などを定めた法律は制定されていませんでした。この法律は2006年に国連総会で採択された「障害者権利条約」の批准に向けた国内法の整備の一環として、「差別の禁止」の基本原則を具体化するために制定されたものです。これを受けて我が国は2014年1月に同条約を批准しました。
以下に、この法律の概要を紹介いたします。
1.行政機関等および民間事業者に対し、障がいを理由とする差別の禁止をつぎのように定めています。
  ①「不当な差別的取扱いの禁止」
   障がいがあるということだけで、正当な理由なく、サービスの提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりするような
   行為などを禁止しています。
  ②「合理的配慮の不提供の禁止」
   障がいのある方などからの配慮を求める意思の表明があった場合には、負担になり過ぎない範囲で社会的障壁を取り
   除くために必要で合理的な配慮を行うことが求められます。こうした配慮を行わないことで、障がいのある方の権利利益
   が侵害される場合には差別に当たります。
   (行政機関等は①②いずれも法的義務。民間事業者は①は法的義務、②は努力義務)
2.障がいを理由とする差別を解消するための支援として、つぎの取り組みを行うとしています。
  ①「紛争解決・相談」-国および地方公共団体による相談・紛争解決のための体制の整備
  ②「啓発活動」-国および地方公共団体による普及・啓発活動の実施
  ③「情報収集等」-国内外における差別および差別の解消に向けた取り組みに関わる情報の収集、整理および提供
  ④「地域における連携」-障害者差別解消支援地域協議会における関係機関等の連携
 この法律が施行されるまでの間で、政府は、障がいを理由とする差別の解消の推進に関する基本方針を策定します。そして、行政機関等では当該機関における対応要領を策定し、民間事業者にはその事業を担当する大臣が事業分野別の対応指針(ガイドライン)を策定するとしています。前述の「不当な差別的取扱い」や「合理的配慮」の具体的な内容については、この基本方針や対応要領、対応指針で示されます。
 障がいのあるなしにかかわらず、相互に人格と個性を尊重しあいながら共生して暮らせる社会づくりに向けて、当事者、関係者の意見を反映させ、この法の主旨を実現できる内容にすることが求められます。

(2015/02/02)