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平野小剣の人物像(1) |平野小剣の人物像

少しでも部落問題に関心がある者であれば、1922年に創立された全国水平社を知らない人はいないでしょう。
この全国水平社創立に参画した一人が、平野小剣です。

しかし、平野は同じく全国水平社創立に参画した西光万吉や、第二代の中央委員長になって亡くなる1935年まで活躍した松本治一郎ほど知られた人物ではありません。

私が2001年から東日本部落解放研究所の『解放研究』で5回にわたって「平野小剣研究」を発表し、また宮崎学氏が『近代の奈落』(解放出版社、2002年)で平野を紹介するに及んで、ようやく平野への一定の関心が高まってきたといえます。

全国水平社創立大会で採択された宣言、いわゆる「水平社宣言」は今日の部落解放運動の原点ともいえる歴史的文書です。

この宣言を起草したのは西光ですが、大幅に添削をおこなったのは平野です。
この重大な事実を明らかにしたのは、没する3年前、1967年の西光自身です。

西光の思想的特徴が「人間を尊敬する」という人間主義とするならば、平野のそれは「吾々がエタであることを誇り得る」という自らの民族に誇りを持つ民族意識にも似た部落民意識ともいうべきものであり、この二つが宣言に象徴される全国水平社創立の思想的核心といえます。
大阪人権博物館 研究員

(2013/07/16)