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軽度の知的障害者 |人権情報

ゆじょんとブックレット 「空と海」

? ? ? ? ? ? ~信楽の実践から

? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ?軽度の知的障害者にかかわる全ての人へ~

「しょうがない」ということ  その1

障害があるということ・知的障害とは

障害があるということは、障害がない人たちがとくに意識せず行っている生活やコミュニケーションに何らかの困難を抱えているということです。
「普通の人」は頑張らなくても普通でいられ、自立を願わなくとも自立します。
「知的障害者」は頑張っても普通になれないし、自立を願っても公的支援がなければ自立できないのです。
知的障害とは、アメリカ精神遅滞学会によると発達臨床心理では下表のようにとらえています。

???????????????????????????????????????????????????????????????知的障害とは
アメリカ精神遅滞学会(AAMR American Association of Mental Retardation)による
軽度:日常生活に差し支えないほどに身辺の事項を処理できる、抽象的思考は困難
中度:環境の変化に適応する能力に乏しく、他人の助けがあってようやく身辺の処理をすることができる程度
IQ71~85   ??境界線  精神年齢 13歳以上
IQ71~50    軽度  ? 精神年齢 9~12
IQ49~35    中度  ? 精神年齢 6~9
IQ34~20    重度  ??精神年齢 3~6
IQ20未満     最重度  精神年齢  ~3

・「IQ70以下のものの半数は社会適応上問題ない」については、現代の日本では、核家族化、地域社会、社会倫理、規範の崩壊の中で弱者ははじき出され、社会適応はきわめて困難になっています。

また現在は知的障害をIQのみではなく社会生活能力の観点から、かつ障害は個人特有のものではなく社会のありようにより変わるものととらえられています。

軽度知的障害と言われている人たち

私たちは年金裁判を通じて、年金、福祉関係者は勿論、ー般的にも彼らの存在が全く理解されていないことを知り愕然としました。が、考えてみればそれは当然のことです。
軽度の彼らの多くは身体的には何ら問題がないし視覚的にも会話的にも障害が見えません。彼ら自身も自分のことを障害者と思っていません。
私たちは普通名詞を聞くとそのものの形を映像としてイメージします。例えば「リンゴ」と聞くと「赤いりんごの形」をイメージし「身体障害」と聞くと「車いす」をイメージします。では「知的障害」の人はどうなるでしょう。一般的に障害者福祉作業所や養護(自立支援)学校に通っている障害の重い人を見て「顔を見たらすぐわかる。言葉もわからず、物事の理解もできない」とイメージしていると思われます。でも同じ知的障害者と言われていても、軽度の彼らは見ても話しても「どこが障害?」と関係者にさえ言われたりします。そこに彼らの問題や課題があるのです。軽度の知的障害者は、ある時は普通だと言われ、ある時は障害者と言われ健常者と障害者のはざまで揺れ動いています。
アメリカの精神遅滞学会では軽度の知的障害者のことを『忘れられた人々』《Frgotten-generation》と、彼らの問題が特筆されているそうです。その言葉は彼らの社会的位置を的確に述べています。
2006年、信楽通勤寮の寮生4名、他2名合計6名について障害基礎年金2級の支給申額をしたところ不支給決定がなされたので、それを不服として裁判に訴えたもの。結果として全員支給となる。

ブックレット「空と海」A5・72p 500円
軽度知的障害者にかかわるすべての人へ

ことばの理解と活用

彼らの言語特徴のひとつとして、文章を読む場合は、読めることばのみ(読めない言葉は無視する、推測する)から全体を推測することがしばしば見受けられます。
■事例:話を作る。
新聞に火事の写真が載っている。「放火、逮捕」と見出しがある。その横にアイドル○○○○の写真が載っでいる。それらを自分流にまとめて「アイドルの○○○○さんが悪いことをして逮捕された」と大真面目で職員に話す。

このようなことは日常的にたくさんあります。通勤寮の事務所にはいろいろな情報があります。そこで話している職員の言葉、ボードに書いてある個人名や普通名詞が、彼らによって独自・ユニークな物語に組み立てられ、携帯や口コミで彼ら仲間や町の人に伝わります。だから困る、悪いというのではなくそういうものなのです。
人は成長発達する中で、多くの言語的意味を習得し知的機能を高めていきます。その言葉がまた行動をコントロールするのです。これを「言葉の有意味化」と言いますが、知的な機能と深い関連があります。児童期のさまざまな学習過程を通し、9~10歳にかけて文章全休の意味の論理的な整合性や一貫性を考えながら理解する力が伸びます。
「どこが」「どうして」「どのように」―分析的、批判的に読む、聞く、それを統合して自分の意見とすることで表現する力がつき語彙も豊富になるのですが、知的障害のある彼らの場合「9歳の壁」と言われ、これを超えるのは難しいとされています。

■事例:春男(20歳)は体が大きい(身長180㎝ 体重100kg)。仕事が休みの時はスーパーに出かけ、知り合いに出会うとうれしそうに声をかける。自閉気味だが力も理解力もあるので職場の評価もよい。
でも仕事上で怒られると、その内容よりも「怖い顔してオコらはった」ことに頭がいっぱいになり「正しくない」反応をする。
「そうか」と冷静に話を聞きながら「オコラハッタ」理由を一つ一つきちんと説明すると納得するが、「そんなことをしたらあかんやないか」と叱るのみだと何がアカンのか理解できず「その言葉づかいや表情のみ」に反応し「自分は悪いことしていないのに、一生懸命仕事をしているのに」と不信感を持ち、次から次へと反応がエスカレートして解雇までいったことがある。
ある日の昼休み、会社より支援センターに電話があった。「彼が近くのスーパーマーケットで保護され迎えに行ったが話がようわからんので来てほしい」。会社に行って話を聞くと「こんなにいい天気の昼間なのに、雨ガッパを着て店内をうろついていたので不審に思われ保護された」とのこと。ワーカーが彼に話を聴くと「午前中に仕事のことで叱られたんや。それでかんしゃくを起こしてロッカーの中の自分の服をびりびりと破いてしもた。それでな、昼休みにスーパーに行きたかったのに行けへんやんか。前に会社の作業着で町の中をうろついていたら『あかん』と言われたもんやから自転車につけていた雨ガッパを着て行ったんや。悪いと言われたことはしてへんのに何で怒らはんのや。自分の言うことが何でわかってもらえへんのやろ」。

副島忠義 著

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(2014/07/07)