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犯罪被害者 障害者向けの絵本『たすけて』 |その他

障害者向けの絵本『たすけて』

この度、滋賀県公安委員会指定犯罪被害者等早期援助団体 特定非営利活動法人おうみ犯罪被害者支援センターが、絵本『たすけて』を作製しました。
判断能力が十分ではない方や、子どもたちがさまざまな被害に遭いながらも、訴えることができなかったり、その後の心身への影響に苦しい思いをしている状況を、自分自身も周りの方にも理解していただきたい。そして、そのような時に相談できるセンターがあることをもっと多くの方々に知っていただきたい。との思いを込めて作製しました。

おうみ犯罪被害者支援センターは、平成12年から「犯罪被害者支援」の活動に携わって10年あまりが経ちました。
多くの方々に出会い、被害に関わるお話を聴かせていただき、寄り添い、そして一緒に前を向こうとする日々を繰り返している中で、ある時、障害のある被害者に出会いました。その方の支援経験を通して、「被害にあいながらそれを伝えられない人がいる」という現状を知りました。
障害者向けの研修会で「被害そのものを理解できない人」「被害を訴える方法がわからない人」「被害にあいながらも多少のことは我慢しなければいけないと思う人」「誰にも言わずに我慢し続けている人」「なぜこんな気持ちになるのかわからないけど我慢している人」「辛くて悲しい日々が続いている人」に出会いました。
その時に初めて、私たちがセンターの存在を知っていただこうと思って作っていた今までのリーフレットでは、理解されにくいのだということがわかりました。今までのリーフレットは、「被害」や「支援」に関わる漢字や難しいことばを使っているので、読んだだけではわかりにくいのだという事に気付きました。それで私たちは新たなリーフレット作成に向けて、研修や工夫を重ねて、やさしい言葉やイラストを使って、誰にでもわかりやすいリーフレット(やさしいバージョン)を作りました。それを県内関係機関や施設に配布したところ、多くの方々から「とてもわかりやすい」との反響があり新聞各紙にも取り上げられました。

けれどもその後、「もっと丁寧にしっかり伝えたい」との思いが強くなり、ページ数を増やして絵本のようなやさしい「犯罪被害に関する冊子を作れないか」との考えに至りました。障害などで判断能力が十分ではない人はもちろん、難しい漢字やことばではわかりにくい子どもや、細かい字を読むのがしんどい高齢者など、だれにでも「犯罪被害にあったらどうしたらいいのか」をわかってもらえるようなものができたらいいなと思っていました。

作り始めた時は、「元のリーフレット(やさしいバージョン)をふくらませたらいいのではないか」と簡単に考えていたのですが、「伝えたいことば」を「わかることば」にするのが大変でした。漢字にふりがなを打つだけではだめだということもわかりました。先ず「犯罪」とは「被害にあう」とはを、どう言い換えればいいのかというところから壁にぶつかってしまいました。「法律」とは「脅す」とは、と一つ一つ考えました。その都度、障害者に関わっている方たちに教えていただきながら、ようやく「文」が完成に近づいてきました。この「文」と「イラスト」の組み合わせで、全部読んで理解できなくても、見ただけでもわかるような冊子にしたいと考えました。

当初の計画では、「冊子はA5版で左頁に文字を、右頁にイラストを配置する」と考えて、言葉で伝える文章の補助としての「イラスト」を描いてもらうように印刷会社に依頼しました。それは、犯罪に関することや心の動きを「イラスト」で表すのはとても難しいと思っていたからです。
ところが実際に完成した「絵」は、補助的なイラストではなくしっかりと訴えかける作品になっていました。センター内では「これを小さな冊子にするのはもったいない」との意見が多くなり、なんとかこれを「絵本」にできないかとの思いが強くなってきました。

子ども向けの絵本のように、横長で、見開きで、文字と絵を組み合わせたデザインにしようと、またそこから新たな挑戦が始まりました。日常の相談支援活動の合間を縫って、「この言葉でわかるのか?」「この絵だけでは伝わらないところをどのような言葉で説明をするのか?」から「わかる人もいるがわからない人には?」「全ての人に理解してもらうのは難しいのではないか?」等々、延々と話し合いが続きました。
平成26年の年が明けて、ようやく原稿が完成しました。印刷会社のデザイナーと相談しながら第一枚ができてきました。「紙質が」「色が」「この模様が」「文字が」「ルビが」と修正を重ね、それでも「この金額ではできる部数が少ないのではないか?」「表紙の紙を変えればふやせるか?」の交渉を繰り返しながら、3月の初めに、ようやく校了しました。

この事業は、私たちにとっても初めての試みでした。
実際にできあがってきたこの絵本『たすけて』を見た時の感動は忘れられません。今までもいろいろな啓発用のパンフレットなどを作ってきましたが、それらが納品された時の気持ちとは比べものになりません。

1年間のみんなの熱い思いでできあがった絵本『たすけて』が、これから多くの方々の手に届いて、読んでくださった方がどう感じてくださるか、ドキドキしています。

絵本『たすけて』は新聞に掲載されたり、県内ニュースや関西地域のニュースから口コミやメールで広がり、また、テレビ番組で全国に放送されたことで、問い合わせが多くなっています。

絵本『たすけて』は、おうみ犯罪害者支援センターのホームページから印刷できますので、ご自由にお使いください。

ホームページ 特定非営利活動法人おうみ犯罪被害者支援センター

作成担当者 松 村 裕 美

特定非営利活動法人おうみ犯罪被害者支援センター
障害者向けの絵本『たすけて』

 

(2014/07/07)