案内板

ふーどばんくOSAKAの挑戦 その2 |特集

3.活動拠点の様子

ふーどばんくOSAKAのある大阪食品センターの外観

大阪府堺市東区、大型車が多数行き交う大阪の大動脈、大阪中央環状線沿いに、大きな物流基地である大阪食品流通センターがある。同センターの広大な敷地内には大型倉庫が建ち並び、トレーラーの駐車場が広がっている。この敷地の一角に、ふーどばんくOSAKAの活動拠点がある。

今回、この活動拠点を訪問し、事務局長の森本範人さんに施設をご案内いただいたのち、その活動内容の話をうかがった。

施設は常温倉庫数区画に冷蔵倉庫、冷凍倉庫、これに事務所という構成であり、順に見学した。

常温倉庫の様子。備蓄品などが収められている

常温倉庫は、事務所棟の一角にあり、アルファ化米やカンパン、米や飲料など長期保存がきく食品が所狭しと並べられ、保管されていた。別棟にある冷蔵庫は広々とした空間で、ラックによってきれいに区分けされた中に段ボール箱が整然と並び、要冷蔵の加工食品や野菜などが保管されている。

さらに奥へと進むと、巨大な電動扉があり、扉をあけると冷凍倉庫となっている。中はマイナス20度、高い天井から氷柱が垂れる極寒の空間となっている。冷凍倉庫内は天井に向かって数段に分けて区画されており、冷凍食品が多数保管されていた。

冷凍倉庫の様子。-20℃の空間

事務所は、奥にはスタッフのデスクが配置され、手前には作業机や冷蔵・冷凍庫とともに、折りたたみボックスが多数置かれている。中に食品が入っており、ここで仕分け作業を行っている様子がうかがえる。事務所の壁面には子どもたちから届いた手書きのポスターがたくさん飾られており、カラフルな絵とともに「ありがとうございます」などと感謝の言葉がつづられている。

5名のスタッフではすべての作業を行うことはできず、毎日数名のボランティアの方の協力が必須という状態。車3台は提供元からの食品回収、提供先への配送とフル稼働の状態であり、人員やルートを調整して何とかやりくりをつけているとのこと。

行政からの補助金はなく、運営資金はすべて寄付金によって賄われている。十分とはいえない財源の中で、スタッフが知恵を絞って運営を行っている。

事務所内に飾られている子どもたちからの感謝状

4.活動の状況

ふーどばんくOSAKAは2013年に活動をスタートしているが、取扱量(重量ベース)では2014年は40数トンだったものが、2015年には92トン、2017年には205トンと急激に増加している。

現在、食品提供元の数は550か所を超えており、このうち食品メーカーや販売などの食品関連業者が約1割、保有する災害用備蓄品(入替時)を提供してくれる団体が2~3割、残る約6割は個人からの提供となっている。一方、食品提供先の数は420か所を超えており、子ども食堂や障がい者児童支援団体・施設、生活困窮者支援団体・施設、シェルターなどが対象となっている。

大阪府下では子ども食堂は200か所程度あるといわれるが、このうち150か所以上と供給契約を交わしている。しかし、コロナ禍で、子ども食堂は危機的な状況に陥っている。間借りしていた居酒屋や喫茶店の閉店により活動場所がなくなった、活動を支えてきた60歳以上の女性スタッフが、コロナ感染を危惧する家族から参加を反対されスタッフを確保できない・・・。このような理由で、活動を維持できない、再開の見込みが立たないといった子ども食堂が数多くあるという。

現在、日本では、子どもの7人に1人、ひとり親家庭ではその約半数が(相対的)貧困状態といわれている。子ども食堂は地域における最後のセーフティネットともいえる存在となっているが、コロナ禍によるこのような現実はなんともやりきれない。

食品の提供は個人ではなく団体への提供が原則となっているが、生活困窮者への個別支援も一部行っている。ただし、その際は、社会福祉協議会など地域の窓口を通じた支援とし、自立できるまでの短期支援(6ヵ月未満)を基本としている。食品を届けること(=もらう)が目的ではなく、自立していくための過程における手段として、食品を通じて「つなぐ」ことを目的とした支援である。

今の日本では、貧困状態に陥ってしまうと地域や社会に居場所がなくなり孤立していき、より状況が深刻化するという悪循環となる。そういった「孤立」という状況に対応するため、堺市を中心に実施している「おふくわけ食マーケット」では地域と一緒になってボランティアに袋詰めをしてもらい、一人暮らしのお年寄りと久しぶりに対面したり、相談窓口に行けていないという生活困窮者の話を聞いたりして、きずなを作りながら食品を提供する活動を行っている。

また、さまざまな地域・企業などと一緒に「フードドライブ」とよばれる活動も行っている。受付窓口を設けて、家庭で余っている食品(1ヵ月以上の賞味期限が残っているもの)をフードバンクに提供してもらい、支援が必要な人に届けるというシステムになっている。

企業との連携では、2018年からダイエーとの間で、フードドライブ活動(店舗のサービスカウンターに回収ボックスを設け、来店者から食品の提供を募る。現在、大阪府下37店舗で実施)や販売許容日を越えた食品の寄付といった協力をスタートするなど、さまざまな企業との連携を強化してきている。

最後に、森本事務局長から「ふーどばんくOSAKAでは、設立当初から『食は人権』『もったいないをありがとう

ふーどばんくOSAKA 森本範人 事務局長

 

に変える』と言ってきた。フードバンクの究極の目標は「つなぐ」ということ。人と人、人と地域、企業と地域、行政と地域を、食を通じてつなぐ活動であり、共同することによって困った方が安心して相談できる地域づくりに協力していきたい。」と、これからの活動への思いをお聴きした。

5.おわりに

日本での食品ロスは毎年600万トンを超えている。そのうち6割は事業系で、残る約4割は家庭系で、うっかり忘れによる賞味期限切れやカビの発生などによって大量の食品が廃棄されている。

私たち一人ひとりも、まずは、食べ物を大切にしようと心掛けること、家の中の棚や冷蔵庫の様子を確認してみること、このような取り組みから始めていく必要があるのではないだろうかという思いを強くした。

ふーどばんくOSAKA事務所の前にて

(2022/03/29)