シリーズ

「ギャンブル依存症」とは |ご存じ?Q&A

「ギャンブル依存症」は臨床場面での慣用語で、国際的には「病的賭博(pathological gambling)」といいます。ギャンブルのために借金を重ね、周囲の人間関係にひびが入って、仕事の遂行や社会生活を営むうえで必要なバランスを失った結果、経済的な困窮に自ら陥ってしまう状態を指します。

ギャンブル依存症は、アルコール依存症やうつ病と同じく国際機関が認める正式な疾病で、APA(アメリカ精神医学会)は『精神疾患の診断と統計マニュアル第5版』(DSM-5)の中で診断基準を示し、WHO(世界保健機関)は「治療すべき病気」と位置づけています。

「進行性で自然治癒がない」、一度罹患したら「一生の病気」「一生の治療」といわれています。脳内報酬系と呼ばれる「喜び」を生み出す神経系に異常が生じて、脳レベルで物事の価値判断が変化してしまうようです。

異常を起こした脳にとっては、たとえば、幼い子どもを炎天下の車の中に放置したらどうなるか。借金を重ねて会社の金に手をつけたら、企業情報を売ったら、何が起こるか。これらは「ギャンブルをすること」に比べ、取るに足らない些事となってしまいます。

パチンコ、パチスロ、競馬、競艇、競輪などのギャンブルにはまり、自分の意志では抜け出せなくなった状態は、麻薬と同じく、人格や意志の力で解決できる問題ではありません。

厚生労働省の研究調査(2013年)では、生涯でギャンブル依存症が疑われる状態になったことのある人は、成人人口の4.8%と推計されていますが、先進諸国の1.5~2.5%に比べかなり高く、併発する精神障害はうつ病が45.7%と圧倒的に多く、「生涯自殺企図率」は40.5%と自殺リスクの高い疾患です。

しかし、日本は依存症治療の後進国といわれており、依存症に対応できる医療機関が不足していることや、相談支援体制が十分に確立されていないことが原因のようです。

この病気は、「否認の病」といわれ、資金があってギャンブルを続けられる限り、問題はあまり目に見えません。お金が無い、止められない、そのとき初めて嘘や借金などさまざまな問題が発生します。

なお、同省の研究調査(2017年)では、生涯でギャンブル依存症が疑われる状態になったことのある人は、成人人口の3.6%と推計されています。両調査は調査方法が違うため増減は評価できないとされていますが、いずれにしても日本の割合の高さが目につきます。

まずは、ギャンブル依存症について、厚生労働省ホームページ内「依存症対策」で認識を深め、症候に応じ、適切な措置を講ずることが緊要です。

(2019/04/16)