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特定の民族や国籍の人びとを排斥する差別的言動は、人びとに不安感や嫌悪感を与えるだけでなく、人としての尊厳を傷つけたり、差別意識を生じさせます。
日本は国連の人種差別撤廃条約に、1995年12月に加入手続きをとり、差別思想の流布を法律で処罰するよう求める第4条を留保して批准し、1996年に発効しています。その後2014年8月の国連人種差別撤廃委員会の日本政府報告審査にて、政府に対してヘイトスピーチへの対処を勧告する最終見解が公表されました。
このような情勢の中、2016年6月3日「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取り組みの推進に関する法律」、いわゆるヘイトスピーチ解消法が公布・施行されました。
同法は2章7条によって構成されており、その解消に向けた取り組みについて基本理念を定め、国・地方公共団体が相談体制の整備や教育、啓発活動の充実に取り組む責務を明らかにするとともに基本的施策を定めています。
基本理念として、国民は本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性に対する理解を深めるとともに、本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならないとしています。
さらに基本的施策として、国は相談体制の整備、教育の充実および啓発活動などを実施することとし、地方公共団体は国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、これらの基本的施策を実施するよう努めることとしています。
法施行後、社会に問題を認識する機運が生まれヘイトスピーチのデモは減少した一方で、インターネット上の中傷は、野放しに近い状態です。
この法律は理念法で罰則規定がないことや、差別根絶に向けた財政措置がないことが実効性を弱めており、差別的言動がヘイトクライム(差別犯罪)問題へと移行しはじめています。
国は差別表現に対して慎重な運用をしていますが、包括的な差別禁止を含む人種差別撤廃基本法・条例の制定が喫緊の課題です。
(2019/09/11)