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「パワーハラスメント防止法」とは |ご存じ?Q&A

職場でのパワーハラスメント(以下「パワハラ」という)を防止することを目的に、労働施策総合推進法を改正する法案が、2019年5月29日の参議院本会議で可決成立し、6月5日に公布されました。

2018年度に全国の労働局などが受けた相談では、「いじめ・嫌がらせ」が8万件を超えて7年連続トップ。パワハラによる精神障害の労災認定も増加傾向にあり、被害が深刻化しています。

改正法は、「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決の促進」(ハラスメント対策)を国の施策として明記し、職場におけるパワハラを、職場において行われる1.優越的な関係を背景とした言動であって、2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、3.労働者の就業環境が害されるもの、の3つの要素をすべて満たすものとして、はじめて法律にその定義を明文化しています。

そして、パワハラ防止のため、相談体制の整備などの雇用管理上必要な措置を講じることを事業主に義務付けており、2020年6月1日から施行されました。(中小事業主は2022年3月31日までは努力義務)。また、事業主は、労働者が事業主にハラスメントに関する相談をしたことなどを理由として不利益な取扱いをすることが禁止され、事業主の責務とともに労働者の責務についても「他の労働者(取引先など他社の労働者や、求職者を含む)に対する言動に必要な注意を払い、事業主が講じる措置に協力すること」と規定し、その他、都道府県労働局長による紛争解決援助、紛争調整委員会による調停や、事業主に対する助言、指導または勧告と、勧告に従わなかった場合は企業名を公表する場合もある旨も定められています。

この法改正に基づき、2020年1月15日には厚生労働省より、「パワーハラスメント防止のための指針」が告示され、職場におけるパワハラの例や、事業主が雇用管理上講ずべき措置の具体的な内容などが示されました。

指針では、パワハラ3要素についてより具体的に説明し、パワハラの代表的な言動の6類型(1.身体的な攻撃、2.精神的な攻撃、3.人間関係からの切り離し、4.過大な要求、5.過小な要求、6.個の侵害)について、パワハラに該当する例、該当しない例を示しています。

法で義務付けられた、事業主が雇用管理上講ずべき措置については、1.事業主の方針などの明確化及びその周知・啓発、2.相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、3.事後の迅速かつ適切な対応、4.併せて講ずべきプライバシーの保護などの4項目として、その内容を定めています。1.から4.の措置義務に加えて、セクシュアルハラスメントなどを含む職場のハラスメントについて一元的に相談に応じることのできる体制の整備、職場のパワハラの原因や背景となる要因を解消するための取り組みなど、取り組むことが望ましい事項についても取りあげ、事業主へ対応を求めています。

(2020/06/30)