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「アイヌ民族支援法」(アイヌ新法)とは |ご存じ?Q&A

「アイヌ民族支援法」(アイヌ新法)は、アイヌ民族を初めて先住民族と明記し、従来の文化振興や福祉政策に加えて、地域や産業の振興などを含めたさまざまな課題を解決することを目的とした法律です。正式名称は「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」。2019年4月19日に国会で成立し、同年5月24日に施行されました。

「アイヌ民族支援法」(アイヌ新法)の成立には国連で採択された宣言が背景にありました。1899年制定の「北海道旧土人保護法」はアイヌの人びとの保護を目的とし、また「北海道旧土人保護法」に代わって1997年に制定された「アイヌ文化振興法」はアイヌ文化の振興が中心の内容でした。その後、2007年に国連において「先住民族の権利に関する宣言」が採択されて国内外で先住民族への配慮を求める声が高まりました。翌年の国会で「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が採択され、これを受けて政府が有識者懇談会を設置し、その報告をもとに2009年に「アイヌ政策推進会議」を発足させて、新たなアイヌ施策展開について検討してきました。その結果として、今回の「アイヌ民族支援法」(アイヌ新法)成立につながったのです。

「アイヌ民族支援法」(アイヌ新法)はアイヌの人びとを日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族であるとの認識を示し、アイヌの人びとの誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進について国や自治体が責務を負うことを定めています。

例えば、地域の活性化を目指してアイヌ文化を活かした事業を計画する市町村が国の認定を受けて交付金を受給する仕組みや、独自の文化を継承していくためにアイヌ民族の儀式で用いる樹木の国有林での採取や、自治体の許可が必要な川での伝統的なサケ漁の手続きの簡素化などの規制緩和も盛り込まれています。

また国は、北海道白老郡白老町のポロト湖畔にアイヌ文化の復興や創造の拠点となるナショナルセンターとして「ウポポイ」(アイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」)を愛称とする「民族共生象徴空間」を2020年7月12日に開業しました。ここには日本で初めてアイヌを主題とした国立アイヌ民族博物館、アイヌ文化を体験できる国立民族共生公園や慰霊施設が建設されました。この「民族共生象徴空間」が、将来のアイヌ民族とアイヌ文化の発展や情報発信、国民のアイヌ学習の中心になると期待されています。

(2020/08/26)