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「心理的安全性」という概念が近年注目されています。もともとは社会心理学の分野から出てきた用語です。アメリカの組織行動学の研究者エイミー・エドモンドソン教授が1999年に発表した論文でその重要性が提唱され、その後、2012年にグーグルが社内実験「プロジェクト・アリストテレス」の調査報告で、生産性の高いチームは「心理的安全性」が高いという結果を公表したことで、より広く知られるようになりました。組織やチームの中で、率直に自分の意見を伝えても不利益を被ることなく、さらに対人関係の悪化なども恐れることなく、お互いが思っていることを気兼ねなく発言できる状態を指します。心理学や精神分析学の分野で、赤ちゃんや小さな子どもにとっての母親が「安全基地」と言われるのと同じように(ボウルビィ「愛着理論」)、組織やチームにおける「心理的安全性」もまた、とても大切なものです。自分が自分らしく、安心・安全な状態でいられる、すなわち人権が尊重された状態と言えるでしょう。
この「心理的安全性」が注目されている背景としては、一つには、集団主義的で上意下達の風土が根強い大企業において不祥事が後を絶たないことが挙げられます。同調圧力が強く、人間関係ばかりを重視する組織では、不適切な判断や不正行為に対して、それを指摘し正そうとする声は上がってきません。二つ目には、経営環境の不確実性が高まり、ダイバーシティの推進によるイノベーションがますます求められるようになってきたことが挙げられます。いくら多様な人材が集まっていても、少数意見が尊重されない組織では、新しい意見やアイデアは生まれてきません。
こうした点を踏まえ、最近では、人権尊重やDEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)に関する方針などにおいて、この「心理的安全性」の確保・向上を掲げる企業も増えています。
とりわけ、組織の中で声を上げにくいマイノリティにとって、「心理的安全性」は欠かせないものです。例えば、LGBTQ+などの性的マイノリティや、発達障がいなどによりメンタル面での不安を抱える当事者は、「心理的安全性」の低い職場では安心して働くことができず、仕事で能力を発揮することも難しくなるでしょう。
企業においては、離職防止や従業員満足度向上の観点からも、組織の「心理的安全性」を高める取り組みは、ますます重要なものとなっています。
(2026/07/29)