シリーズ

「自殺対策基本法」とは |ご存じ?Q&A

 先進国で突出した自殺大国(?)が日本です。自殺者が1998年から14年連続3万人を超え、2005年には3万2551人で、性別では男性が72%、年齢別では60歳代が約3分の1を占めています。動機別ではメンタル面を含む健康問題が最多で、次いで経済・生活問題です。2005年の交通事故死者数が6871人であることから、その約5倍弱の人が自殺により亡くなっています。

 このような状況の背景には、さまざまな社会的要因が関係することから、政府は2005年9月より省庁の枠を超えた自殺予防対策の総合的な取り組み検討を進め、2006年6月に自殺対策基本法を国会で成立させました。これにより、自殺予防対策が社会的な取り組みとして行われることになりました。

 この法律は、自殺について「多様で複合的な原因や背景がある問題」ととらえ、その目的を「自殺の防止」と「自殺者親族のケア」の充実に置いています。また、基本理念として「自殺対策を個人の問題ととらえず、社会的な取り組みとしてとらえる」ことを掲げ、事業主にも雇用者の心の健康を保つため必要な措置をとることを、国や自治体などとも連携して対策にあたるよう求めています。

 この基本法は、理念や枠組みを規定するものですが、社会的な取り組みとしてとらえることを掲げているわりには、人を自殺するまでに追い詰める社会構造の是正については何の対策も考えられていません。しかしこれで自殺防止対策が、やっと第一歩を踏み出したといえます。私たちは、健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会の実現のため、より具体的な施策を策定する努力が必要ではないでしょうか。

(2012/11/22)


ホームページ http://law.e-gov.go.jp/announce/H18HO085.html