シリーズ

「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」とは |ご存じ?Q&A

近年、国際結婚後、欧米、特に米国に移住した日本人女性が結婚の破綻後に子どもを日本に連れて戻った結果、子どもを連れ去られた外国人の配偶者が長年に亘り(あるいは半永久的に)子どもから引き離され救済手段がないという事態が多数発生しています(※)。そのため、欧米加盟国から日本の「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」への加入が要求されていました。

この条約は、子(16歳未満)の権利の保護を目的として、親権を侵害する国境を越えた子どもの強制的な連れ去りや引き止めなどがあったときに、迅速かつ確実に子どもをもとの国に返還する国際協力の仕組みなどを定める多国間条約で、全45条からなっています。ハーグ国際司法会議において1980年10月25日に採択され1983年12月1日に発効したハーグ条約のひとつで、2013年6月現在の加盟国は90カ国、批准国は増加しつつあります。

一方、日本では家族法上、子の親権者を夫婦どちらか一方に決めておかなければ離婚は認められず、子の養育の権利・責任(親権)は母親が引き受ける文化が定着しています(判例では、母親側によほどの問題がない限り、親権は母親に渡されるのが通例です。ただし10歳以上の子が自らの意思で父親を選ぶ場合は除きます)。このような事情から、本条約は現在の日本の家族観に合致しない面があり、また、条約締結には国内法の改正が必要となるため加入には消極的でした。しかし、国内外において国際離婚に伴う子の奪取問題への関心が高まっていることから、2011年5月に政府は加盟方針を打ち出し、2013年6月国会で関連法案が可決され加盟が承認されました。

この条約は、国境を越えて子どもを不法に連れ去る、あるいは留め置くことの悪影響から子どもを守ることを目的としており、条約加盟に向けての国内関連法の一層の整備や、所管する裁判所の具体的ルール作りが急がれています。

(※)外国政府から日本政府に対して提起されている子の連れ去り事案などの件数 アメリカ81件、イギリス39件、カナダ39件、フランス33件 (2012年8月(米国については9月)外務省発表)

 

(2014/08/04)