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現在の千日前周辺は実に賑やかなところです。このあたりに墓地があったと言うと、驚く人も多いです。でも、近世の千日墓所ももちろん死者を送る場であることは言うまでもありませんが、同時に大勢の人が集まる一種の観光地としても存在していました。
とすれば、千日前周辺は近代に「盛り場」となっていくのですが、それは決して突然現れたということではなく、近世にその芽があったと言うこともできます。
さて、現在ではすっかり景観の変わった千日前ですが、わずかに当時を偲ぶことができる場所があります。
そのうちの一つが、近くにある松林墓地です。松林墓地には、千日前にあったという三勝・半七(※)の墓が祀られています。
もう一つが榎地蔵です。江戸時代の地図を見ると、千日墓所は巨大な榎木が目印だったようで近世の地図に「エノキ」が描かれています。「千日三昧略絵図」には、巨大な榎木が屋根を突き破っている建物が描かれています。おそらく榎木を神体として信仰の対象にしていたと思われます。
すでに榎木は失われてはいますが、現在も路地の奥に榎地蔵が祀られています。地蔵の目には、大きく変わった現代の千日前がどのように写っているのでしょうか
※ 歌舞伎や浄瑠璃の題材にもなっている、心中したと言われる遊女と染物屋の2人のこと。
(2015/01/05)