シリーズ

「おおさかじん(納涼編)3」 |なにわフィールドミュージアム

(3)化け猫のはなし

江戸時代初頭のこと、家族を江戸に残して大坂に町奉行として赴任した嶋田某という旗本の話です。
彼は暇を持てあましてしばしば琵琶法師を招いて琴や三味線を演奏させて楽しんでいました。
酒もすすみ夜がふけてきたので琵琶法師は嶋田の隣の部屋で横になっていました。
しばらくすると琵琶法師が 連れてきた盲目の少年が「誰かが入り口から入ってきました。見てください」と声をあげています。
驚いて駆けつけた人が、ロウソクを手に調べてみましたが、そこには嶋田が日頃かわいがっていた猫がいるばかり。

盲目の少年は「変な寝言をいうな」と叱られてしまいました。「本当にいたんです」といっても信じてもらえません。
しばらくしたある日のこと、昼寝から目を覚ました嶋田が何の気なしに植え込みの方を見ると、猫が4、5歳くらいの稚児が着る着物をくわえて歩いています。

すると、猫は突然それを着て立ち上がり、うつくしい姫の姿になったのです。

嶋田は塀を越えて出て行った猫の帰りを待ち、捕まえてよそへやってしまいました。
周囲の人は「よくネズミを捕るいい猫だったのに」と残念がったそうです。
年を経た猫は化けるといいますが、これは『宿直草』という江戸時代の本にあるお話しです。

 

(2013/08/19)