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〔見た目問題の今〕ありのままの姿でも安心して暮らせる社会を(1) |人権情報

2019年7月23日、大阪府立男女共同参画・青少年センターにて、広報委員会主催の人権講演会を開催し、アルビノ・ドーナツの会 代表の『薮本 舞(やぶもとまい)さん』をお招きしてご講演いただいた内容を、2回に分けて掲載します。

薮本 舞さん

アルビノと見た目問題

「見た目問題」という言葉をご存知でしょうか?
見た目問題とは、顔や体に生まれつきアザがあったり、事故や病気による傷・火傷・脱毛など、見た目にさまざまな症状がある皆さんが、その見た目がゆえに日々ぶつかる問題、と私たちは定義しています。見た目問題の認知度はまだ非常に低いと痛感しています。
治療に緊急性がないことや生命に危機がないことから軽く見られがちで、今まで社会問題化しなかったのだと思います。だからといって当事者が抱えている問題が軽い問題かというと、決してそうではないのです。

では、具体的にどのようなところに当事者の困り感やしんどさがあるのか、まず、私自身が当事者であるアルビノについてお話をします。
アルビノはアルビニズムと呼ばれたり先天性眼皮膚白皮症(せんてんせいがんひふはくひしょう)と言われることもありますが、当事者ではアルビノで定着しているのでアルビノでお話しします。

アルビノの症状

アルビノの具体的な症状として、体内にメラニン色素がないか極端に少ないため、白いということが挙げられます。アルビノの人は、生まれた時からこの症状と一生うまく付き合っていくコツが求められます。
アルビノの人の毛髪、体毛の白さには個人差があります。髪は、真っ白に見える人、グレーに見える人、ブロンドに見える人もいれば、薄い茶色の人もいます。
皮膚の色も白です。日焼けすると赤くなって腫れて、火傷のようになるので、紫外線対策が重要です。瞳の光彩にも色素がないので、青・赤・褐色・グレー・緑などいろいろな瞳の色の人がいます。

そして、ちょっと目が見えづらいのです。
視力は個人差があり、0.5から0.05前後。0.5以上あり、車の運転免許をギリギリとれる人もいます。一方、初めて行く場所ではどこに何があるか、曲り角がどこか、坂道がどこからかわからないので、白杖(はくじょう)がないと怖いという人もいます。
目にも色素がないので、眩しく、見えにくいということが起きます。これも個人差があって、屋内は遮光レンズやサングラスをかけなくても歩けるという人もいれば、最近の家電量販店などはすごく眩しい光の量なのですが、そのような屋内では遮光レンズが必要という人もいます。
そして水平性眼振による乱視を伴う場合もあります。本人の意思と関係なく眼球が左右に動いたり、強度の乱視を伴う場合があるので見えづらいのです。

アルビノは見た目問題以外にも機能的な障害を伴う人がいるということです。
日焼け・紫外線対策は帽子、メガネ、サングラス、UVカットクリーム、長そで、長ズボン、日傘など、その人のライフスタイルに合った形で取り入れています。

アルビノの人の困り感をピックアップすると、まず、全身の色素欠乏からの見た目問題があること、瞳の色素欠乏からの視力低下によりロービジョン、軽度の視覚障害を伴っている人が多いこと、そして紫外線に弱いこと、この3つが主な点かと思います。

厳しい状況に直面する当事者

アルビノによるロービジョンで視覚障害者の手帳取得が可能な人もいます。ただ、車の運転免許が取れる視力では、手帳は取得できません。
視覚障害者としてのサービスを受けられるかどうかだけではなく、障害者手帳を取得できるということは視覚支援学校への橋渡しもスムーズで、そこでアルビノの当事者に出会うということもあります。コミュニティに繋がっていく手段として視覚障害者の手帳はすごく便利ですが、手帳を取得できないと、公的支援やサービスを受けられなかったり、対象外とみなされて、孤立する人もいます。
同じアルビノでも、支援を受けられる人、コミュニティに繋がっていける人と、孤立してしまう人とがいるということが課題です。

そしてアルビノに限らず見た目問題では、いろいろな社会的障壁にぶつかることがあります。
現在、見た目問題で困っている人を支援する法的な制度はないので、当事者が自分でどうにかしなければならず、厳しい状況に直面することが多いのです。

当事者としての私の生い立ちから


では、私自身の生い立ちを振り返りながら、具体的な社会的障壁についてお話しします。

私は髪の毛が白い状況で生まれましたので、家族がものすごく驚いたと聞いています。
私が生まれたのは、産婦人科の小さな個人病院ですが、なぜ白い状況で生まれてきたのか診断できなかったので、紹介状を書いてもらって大きな病院に行くことになります。
そのため、生まれてからアルビノと診断されるまでに時間があるのですが、両親は、なんでこういう状況で生まれてきたのかわからないし、この子にどういうことができるのかもわからないし、これからどういう困難が待ち受けているのかも全く未知な状況に置かれて、すごく辛かったと聞いています。

最近はネットでアルビノの情報を検索することができますが、一切、日光に当ててはいけないとか、間違った情報もネットにはあり、それが正しい情報なのか、初めてアルビノの子どもが生まれたご家族には判断できません。
医者でもアルビノの正確な情報を持ち合わせていないことがあって「紫外線に弱いはずなのであまり日光には当てないで」という漠然とした説明しかできない。
それでは、どこに気をつけなければいけないのか具体的にわからない。カーテンを閉め切っておかないといけないのか、体育の授業は出られないのか、公園に遊びに連れて行ってはいけないのか、日常生活に照らし合わせた情報が医者から受け取れないのはすごく不安だったと聞いています。

繋がることが大切

そういうわけで、生まれたときに繋がる必要性がある。繋がるのが早ければ早いほど、ご家族のしんどさが少しは減るかもしれません。
アルビノの子どもが生まれた場合、まず最初に繋がりやすいのは地域の保健師さんであることが多いようです。

最近ではクリニックの医者がアルビノ・ドーナツの会のことを知っていて、ここに行ったら情報があるかもしれないと紹介してくださることもあります。
保健師さんから電話がかかってきて「アルビノの子どもさんのご家族がいらしたので、ドーナツの会を紹介してもいいですか?」と連絡をいただいたこともあります。
こうして、どんどん繋がっていく必要性を感じました。

私は、視覚支援学校に通学したことはありません。視覚支援学級にいた経験もありません。
400~500人規模の小学校に入学しましたが、アルビノの人に会うということはありませんでした。アルビノの生まれてくる割合は1万~2万人に1人とされています。会おうと思って会わなければ、なかなか同じ当事者に出会うということは少ないです。

小学校で感じた見えない壁

私はいじめを受けたことはありません。いじめられないけど、何か見えない壁のようなものを感じていました。
同級生はすごく気を使ってくれて、なぜ白いのか聞いてこない。私が小学校に入るとき、私の祖父が先生に、私が白いことや見えていないことを話題にさせないようにとお願いしたようで、それで壁ができてしまったのだと思います。

私が白いということが祖父から先生、先生からみんなに伝わっている。祖父なりに私のことを思い、先生も真摯に受け止めて下さったからですが、みんな私のことを知っているけど、私自身が説明した経緯が一切ないわけで、なんとなくわだかまりができてしまったのかなと。
私の症状の話題はタブーのようになっていました。

今思えば、みんな手探りながらも私のことを思ってくれていたのですが、当時は見えない壁のせいで子ども同士の対等な関係が築きにくく、アルビノのことについて本音を言える友達が私にはいませんでした。
これは持ち上がりの中学校まで続きました。

苦手だった遠足

私は一日中屋外で過ごす行事がすごく苦手でした。遠足は地域の学校が同じところに行くことが多くて、他校の子どもたちが、ものすごく遠くの方で「外国の子どもがいるー」とか「なんであの人白いのー」と盛り上がっているのですが、私の友達はそれは言ってはいけないことになっているので、いてもたってもいられない空気になるんですね。
そんな遠足が1年生から6年生、春と秋に必ずあるので、なかなかつらかったですね。

身近な大人に相談できたらよかったと思いますが、子どもの頃って自分の状態をうまく言葉で表現するのはなかなか難しいですよね。だから伝えづらかったし、諦めて習慣化してしまっていました。
本当はつらいんだということを先生や大人に言えたら、じゃあこうしてみようかと提案してくれたかもしれませんが、自分で諦めてしまい、つらいといえる機会を逃してしまったと思います。

しんどいときは大人に相談しよう

ドーナツの会で子どもたちに話すときや、小学校や中学校での講演では「しんどいのが当たり前やと思わずに、ちょっとしんどいなぁと思うことは大人に相談したらいいよ。1人の大人に相談してあまり手ごたえがなかったと諦めてしまうのはもったいなくて、相性があるから別の大人を頼ってもいいよ」と積極的に伝えるようにしています。
しんどいって言うこと自体もしんどい時がありますが、そういう場合は、大人の人たちが積極的に子どもの様子を見てあげてくださいね、と伝えています。

*講演の続きは、「〔見た目問題の今〕ありのままの姿でも安心して暮らせる社会を(2)」に掲載します。

《アルビノ・ドーナツの会》
2007年に「アルビノの人たちのネットワークづくり」を目的として立ち上げ「支えあえる人の輪を作る」ことを目標に、関西を拠点として全国的にも、アルビノ当事者や家族・仲間同士の交流会などを定期的に実施。また、他の団体との合同イベントなども積極的に行なっている。
近年は、行政機関や教育機関の職員を対象とした人権研修や、学校の人権授業で「アルビノ」や「見た目問題」について正しい情報を伝えたり、新聞やテレビ、ラジオ、インターネットなどを通じてメディアからも啓発活動を行なっている。

(2020/03/12)