シリーズ

「おおさかじん(納涼編)1」 |なにわフィールドミュージアム

(1)人魂(ひとだま)の調査を命じられた「非人番」

ある日、海順というお坊さんが、偶然ある墓地で源右衛門という人の野辺送りの列と出合いました。
しばらくして体調を崩した海順は、あのときに出会った源右衛門が供養を求めているのだろうと思い、
病気をおして供養をしました。
しばらくすると源右衛門が「姿ヲ顕シ」て回向を海順に頼んだという噂がたちました。

さらに、その墓地から「火魂」が出現し、源右衛門の家へ向かったという噂が広まります。
これが評判になって、見物人が100人ほど集まったということです。

この噂の調査を命じられた「非人番」は、源右衛門が現れたというのは単なる「風聞」にすぎず、「火魂」は騒ぎになってから領主の捜査が入ったので、次第に沈静化し、「火魂」も現れなくなり、とりたてて怪しいことは全くないと報告しています。

江戸時代、大坂近郊の町や村には悲田院などから被差別民が派遣され、番小屋で不審人物の取り締まりや警備を行っていました。これを「非人番」といいました。

「非人番」は、奉行所からの指示で犯罪人の探索や身柄確保の仕事にも従事していたのですが、時には噂などの実態調査を命じられることもありました。これは、そんな「非人番」の仕事のひとこまです。

(2013/07/29)