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「おおさかじん(納涼編)2」 |なにわフィールドミュージアム

(2)道頓堀芝居小屋の怪談

ある年の正月、道頓堀の芝居小屋では源平合戦の浄瑠璃興行が評判を呼んでいました。
すべての人形は職人が丹精を込めて作ったもので、まるで魂が吹き込まれていたかのようなできばえでした。

ところが、あれほど評判になっていた興行が、2月に入って長雨が続くようになると急に客足が遠のきました。
それまで忙しかった楽屋番たちは、法善寺の鐘の音を聞きながらぼんやりと日々を過ごすようになっていました。
そんなある日の夜、楽屋番たちが物音を聞きつけて芝居小屋を覗くと、なんと人形たちがひとりでに動き出していたではありませんか。

武将たちは互いにたたかい、疲れて水を飲んでいます。驚いて興行の責任者に告げると、そばで聞いていたベテランの人形遣いは、驚く様子もなく「人形が勝手に動き出すことはよくあることだが、水を飲むというのは不審だ」と言いました。

翌朝、木戸番や札売りたちが、意を決して調べてみると、床下から年を経た狸が飛びだして今宮の方に一目散に逃げていったそうです。

井原西鶴の『西鶴諸国ばなし』にでているお話しです。
そういえば、道頓堀の芝居小屋、中座でも芝右衛門狸が祀られていました。
道頓堀の芝居小屋には狸が出没していたのでしょうか。今の千日前からは想像できない話ですね。

(2013/07/29)