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軽度の知的障害者 |人権情報

ゆじょんとブックレット 「空と海」

? ? ? ? ? ? ~信楽の実践から

? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ?軽度の知的障害者にかかわる全ての人へ~

「しょうがない」ということ  その2

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彼ら(軽度知的障害と言われている人たち)の発達遅滞からくる傾向

「発達」とは未分化なものが分化して複雑な構造を持つにいたる過程、つまり精神活動の発展的な形成過程と言われます。通常、外的な状況が複雑化していくと、抽象化し一般的な性質としてとらえなければ、自分と外的な状況との関係が明確になっていかないものですが、彼らは抽象化するにもその適切な言語を知らないので表現も理解も困難です。つまり精神活動がそこまで発達していないということです。
だからいくら教えても理解できないことがあるし、彼ら自身の持っている言葉と思考、経験から解釈するので周囲がわからないような反応・行動をします。これは彼ら自身の思考操作展開過程の特有性からくるのです。
■事例:晶子(29歳)は、ごく普通に見えるし話せる。一般求人で介護の仕事に就いたが職場の社員寮に閉じこもることが何度かあリ「行動がちょっとヘン」ということで当寮に紹介された。公的機関の判定の結果、知的障害があることが分かり入寮。卒寮後はグループホームから歩いて通勤していた。10年ほど勤めていたが、時々現場から苦情がある。内容は「指示に従わない」「特定の上司のいうことしか聞かない」というたぐいだ。

寮の職員が間に入り調整すると何となく収まっていたが、また問題が発生し、とうとう解雇になった。支援センター職員が「なんで解雇になったかわかる?」と問うと「わからん」と言った。「わからんてどういうこと?」。職場担当の職員に「『今度“疲れた”と言ったらクビや』と言われたので“疲れた”といわへんやったのにクビになった。なんでやろ」

コミュニケーション障害

彼らの障害は抽象的な言葉や数字の理解が難しいことからくる、コミュニケーション障害ともいわれています。世の中では数字や言葉で情報を伝えます。そのただ中で彼らは生活していますが、その言葉や数字の意味することがよくわかりません。だから相手の言っていることの全体の意味がわからないままに(自分なりに解釈して)「はい(わかりました)」と言ってしまいます。また 「これがすんだらあれをやってくれ」と言われると「これ」はわかっていても「あれ」までは理解できなくて「これ」はできて「あれ」はやっていなかったりします。また「あれ」と「これ」を比較して選ぶのも不得手です。「『はい』といったからできるものと思ったのに」「嘘をつかれた」とか「サボった」と見られ信頼をなくします。本人は「嘘をついた」とも「サボった」とも思っていないのでなぜそう見られるのか意味が分かりませんし、言われたことに対する説明(弁解)も適切に言えないのです。
彼らには言葉だけではなく具体的なものを前にして「やってみて、やらせてみて確認することが大切です」。でも一度できたからといって安心してはいけません。身につくまで繰り返し確認することが必要です。間違えても怒ってはいけません。萎縮して自信をなくす、あるいは反発するばかりです。その間違いを誠実に分かやすく説明すると彼も誠実に受け止めます。「ああややこしい」と思わないでください。
最初にきっちり教えていれば、あとは確実にきちんとやってくれます。

ブックレット「空と海」(500円)
軽度知的障害者にかかわるすべての人へ

地域生活の中で困ること

日常生活のなかで漢字や言葉、数字の意味がわからないので事前に教わる必要があります。具体的にいくつか述べてみましよう。
●本やカタログ、説明書を読むことが難しい。
たとえば「シャンプー」を買うつもりでコンビニヘ行っても「シャンプー」「リンス」「コンディショナー」「リンスインシャンプー」など、同じような容器だとどれを買っていいかわかりません。「シャンプー」のつもりで「リンス」を使っていたりします。
●金額の計算ができない:買い物の時 自分の必要なものの値段と量を判断し選ぶ、その金額を財布の中から適切に支払うことが難しい。
「何を?」「いくらのものを?」「どれくらい?」「合計いくら?」「昼食はどれにする? おつりは?」「?」、「千円札が10枚で1万円」「?」、1か月の収支を考えることが困難で生活の維持ができない―遊興費に使い過ぎる、使わなさすぎる―
●病院で自分の症状を述べ、与えられた情報を的確に受け止め、返答することが難しい
窓口で「どこが悪いのですか?」「熱はどれくらい?」「いつから?」「痛みの程度は?」「問診票を書いてください」など。また医師の診断を理解しそれを実行することが難しい。
●交通機関を利用するのが難しい
行先駅名の文字を読む。運賃の数字と財布の中の金額を照らし合わせ支払う。掲示板を見て「どこまで?」「いくら?」を財布から支払う。このように人がふつうに何の問題もなく、意識せずにしている行為が、どうしてもできないから知的障害というのであって、頑張ればできるようになるものではありません。

教育・福祉・労働福祉行政のとらえかた

日本の法制度では直接介護の必要度(身体機能障害の程度)によって福祉の対象となり、基本的にその視点から整備されているので「身体的機能に問題のない」彼らは障害福祉制度から見れば制度の対象外とみられます。つまり、
○障害年金判定基準では「身体障害者の判定基準」が準用されて、知的に軽度の人は年金支給の対象外とされたりし、
○支援費制度においても、身体障害の程度を基準にした介護認定基準を準用されるので、軽度の彼らに対しては「あなたは支援の対象ではない」と判定されたりします。
しかし障害は事実としてあります。
軽度の人たちはどうしたらよいのでしょう。

障害者手帳

児童相談所や更生相談所でIQなどのテストを経て発行されます。知的障害の場合各都道府県で呼称が異なる場合があります。滋賀県の場合は「療育手帳」です。親も子も障害者と呼ばれたくないので学校を卒業した後はそれを機会に、学校とかかわることを拒否したり、障害者手帳を失くしたり捨てたりする人たちもいます。
しかし手帳は存在証明でもあり、特に親亡き後、福祉に対応を求めるときに必要です。手帳がないと相手にされないこともあるので、大切に保管する必要があります。

副島忠義 著

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(2014/09/01)