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虹色ダイバーシティ(4) 日本初、LGBTの職場環境に関する調査(1) |性的マイノリティの目線から見える社会

虹色ダイバーシティ 代表 村木真紀
ホームページ http://www.nijiirodiversity.jp/

日本初のアンケート調査

2月から3月にかけての45日間、虹色ダイバーシティは「LGBTと職場環境に関するアンケート調査」をインターネットで行いました。1125名の回答があり、日本で初めての、LGBTと職場の問題に関する大規模なデータを集めることが出来ましたので、何回かに分けて、その概要をご紹介したいと思います。

LGBTはどの職場にも「いる」

回答者の属性をみると、10代~60代まで、日本全国から回答が集まりました。

男性同性愛者(ゲイ) 328人
バイセクシュアル男性 25人
女性同性愛者(レズビアン) 314人
バイセクシュアル女性 182人
MTF※(男性から女性へのトランスジェンダー) 63人
FTM※(女性から男性へのトランスジェンダー) 113人
その他のセクシュアリティ 100人                             合計1125人

選択肢にあげた、全ての業界、全ての職種から回答がありました。多い順に、医療・福祉職12.8%、営業職12.3%、一般事務8.3%、広告・美術・クリエイティブ系7.7%、教育関係7.6%、公務員・団体職員7.6%となっています。
LGBTは人口の5%で、どんな職場にも存在します。どんな業界でも職種でも、決して無関係ではないのです。

レズビアンの自立指向

正社員、非正規雇用などの雇用形態を分析すると、興味深い結果が出てきました。男性同性愛者と一般男性の非正規雇用率はほとんど差がないのですが、女性同性愛者と一般女性を比べると、女性同性愛者の方が正社員、自営業の比率が高かったのです。

女性同性愛者の非正規雇用率 22.6%
一般女性 54.5%(労働力調査H24)

女性同性愛者は男性と結婚するという選択肢がないため、経済的な自立を求める傾向があるのではないかと思います。

トランスジェンダーは中小企業に多い?

会社規模をたずねると、男性同性愛者は一般男性と比べて大企業に多く、自営や小規模会社に少ないという結果になりました。一方で、トランスジェンダーは、11人〜100人の中規模会社に務めている人が比較的多いということが分かりました。

これは推測ですが、男性同性愛者に関しては、老後の不安があるために、大手指向があるのかもしれません。また、トランスジェンダーに関しては、就職活動のハードルがあるために大手企業には少ない可能性があります。男性用、女性用のスーツを着たり、住民票等の名前から性別が判明したりすることがハードルになるのです。就職活動に関しては今回の調査では対象外であったので、今後の調査が必要だと考えています。

LGBTは転職経験が多い

転職経験をきいてみると、LGBTは一般より転職経験率が高いことが分かりました(一般平均51.8%、LGBT平均60.0%)。もちろん、転職にはポジティブな理由もあると思いますが、職場での居心地や働きやすさが悪く、ネガティブな理由での転職も多いのではないかと考えます。
特にMTFの転職率が高く、転職経験者は68.3%、41.3%は3回以上転職しています。 自由記載欄には、トランスジェンダーであることで、職場でいじめを受けたり、解雇されたりしたという経験が書かれていました。望む性別で働けているのか、性同一性障害の治療や手術のタイミングとの関係はあるのか、こちらも今後の調査で明らかにする必要があると思います。

職場の人間関係

職場の人間関係を聞いてみると、人間関係が悪い/非常に悪いと回答したLGBTは8.7%でした。特にMTFで職場の人間関係が悪い/非常に悪いと回答した人は20.6%にのぼり、非常に高率だと思います。

人間関係の具体例を自由記載欄に書いてもらうと、ネガティブな内容を書いてきた人が半数以上になりました。
自由記載欄の内容を分類すると、以下のようになりました。

LGBTというより、未婚者への差別的言動についての記載が多かったのは驚きでしたが、納得できるものでもあります。「結婚しないの?」「結婚しないと(仕事でも)一人前ではない」という言葉は職場で日常的に交わされる会話であり、これはLGBTにとっては大きなプレッシャーです。しかし、こうした言葉はLGBTでない未婚者にとっても、プレッシャーのかかる言葉だと思います。逆に考えれば、未婚者への差別的な言動がない職場、多様なライフスタイルへの理解がある職場では、LGBTも今より不快な思いをしなくて済むかもしれない、ということです。

自分が職場で直接的なハラスメントを受けていると書いた人が54人いました。配置転換、昇進、退職等に関わる重大なものや、相談ができない/相談したことで二次被害にあった等の記載もありました。これは、とても大きな問題であると思います。

2013年5月9日に、性同一性障害者が職場でのいじめで適応障害になり、労災申請をしたというニュースがありましたが、これはおそらく氷山の一角で、今後こうした係争が増えていくのではないかと思います。

※トランスジェンダー 身体的、社会的に割り当てられた性別とは違う性のあり方に移行すること。MTF(Male To Female) は、身体的、社会的な性別が男性である人が、女性へと移行すること。FTM(Female To Male)は、身体的、社会的な性別が女性である人が、男性へと移行すること。

次回に続きます。

以上

虹色ダイバーシティ(1) 職場で働く性的少数者たち

虹色ダイバーシティ(2) 「性別を変えて働きたい」と言われたら…

虹色ダイバーシティ(3) 海外企業のLGBT対応

虹色ダイバーシティ(4) 日本初、LGBTの職場環境に関する調査(1)

虹色ダイバーシティ(5) 日本初、LGBTの職場環境に関する調査(2)

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虹色ダイバーシティ(7) LGBTへの差別的言動は「セクハラ」になります

虹色ダイバーシティ(8) 企業のLGBT担当者になるワークショップ

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虹色ダイバーシティ(10)2014年、LGBTに関する動き

(2013/06/22)