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虹色ダイバーシティ(5) 日本初、LGBTの職場環境に関する調査(2) |性的マイノリティの目線から見える社会

虹色ダイバーシティ 代表 村木真紀
ホームページ http://www.nijiirodiversity.jp/

LGBTと職場に関するアンケート調査

前回に引き続き、「LGBTと職場環境に関するアンケート調査」の概要をご紹介したいと思います。(2013年2~3月実施、回答数1125名) ※前回へのリンク>日本初、LGBTの職場環境に関する調査(1)

約半数が差別的な言動を経験

「職場で差別的な言動を見聞きしたことがありますか?」という問いに対して、「ある」「よくある」との回答がLGBT全体で47.7%、約半数でした。一方で「全くない」と回答したのはたった6.5%です。

あわせて仕事の「やりがい」を感じるかについても質問したところ、やりがいを「強く感じる」「感じる」と回答した割合は、差別的な言動が「全くない」と答えた人で7割程度だったのに対し、差別的な言動が「ない」「普通」「ある」と答えた人では、その割合がどんどん低下し、「よくある」と答えた場合では約4割でした。つまり、LGBTが差別的な言動があると感じる職場ほど、仕事のやりがいを感じにくいのです。

海外の調査で「LGBTであることによるストレスがあると、仕事の生産性が低下する」というものがありますが、日本の職場でもまさに同じ状況であると考えられます。

差別的な言動として記載されていた内容を分析したところ、職場における差別的な言動の主なターゲットは、ゲイ男性ないし「オネエ」であり、記載された内容の約8割でした。この「オネエ」は、ゲイ男性を揶揄しているのか、女性的な男性やMTFを指しているのか、判別できない記載も見受けられました。一方で、レズビアンや女性的でない女性に対する差別的言動も多数報告されています。

職場内の人を揶揄する言動が約3割

差別的な言動についての自由記載欄で、誰を揶揄しているのかを分析すると、職場の同僚(19.4%)、回答者本人(15.5%)など、職場内の構成員に向けられるものが3割を超える結果となりました。「(LGBTは)気持ち悪い」など、誰に向けられたものか分からない記載も多かった(47.9%)とはいえ、実際に職場の誰かを標的にした差別的な言動がこんなにも多いことに衝撃をうけました。これらを悪気のない冗談で放置していてよいのでしょうか?LGBTに関する差別的な言動は、職場におけるハラスメントの一つとして、会社として厳正に対処すべきではないかと考えています。

(記載されていた内容の一部) ・取引先などにちょっとなよなよした感じの人がいると、「あのオカマが」と言ったりする。  ・休憩室でテレビをみながら、オネエタレントが居て”うちの息子があんな風にならなくて良かったわぁ”と、職場の同僚の発言  ・丁寧な物腰の男性患者や細かい要求をする男性患者に、何かというと、ゲイだから仕方ない、という。  ・教員仲間で、新米の教員が指導するときのちょっとした仕草を「オカマっぽいからやめろ」と平然と言った先輩教員がいた。     またLGBTを対象にした言動でなくとも、性差別的な物言いにひっかかりを感じるLGBTが多いことも分かりました。

(記載されていた内容の一部) ・お客さんから、結婚して子供産まないと女じゃない!と言われました。  ・女なんだから子供を産むのが当然。  ・結婚して子供がいないと、人として一人前ではない。

差別的な言動の例として、未婚者へのからかいや、女/男らしさの押し付け、一般的なセクシュアルハラスメントについての記載が目立ちました。これは、LGBTでなくとも、不快に感じる人がいるのではないかと思います。

カミングアウトは「両刃の剣」

カミングアウト(LGBTであることを誰かに伝えること)について尋ねたところ、上司、同僚、部下といった、職場の誰かにカミングアウトしている人は、LGBT全体で38.5%でした。なかでも、MTFで61.9%、FTMで54.0%であり、トランスジェンダーで非常に高い割合となりました。トランスジェンダーは、服装や振る舞い、トイレや更衣室の利用など、日常生活上の困難が多く、周囲に伝えざるをえない、または、意図せず伝わってしまうという背景があるためだと考えられます。

カミングアウト経験者(以下、経験者)と非経験者で、それぞれ「やりがい」「ストレス」「人間関係」との相関をグラフにしました。経験者と比べて非経験者は「やりがい」を感じにくく、逆に「ストレス」を感じやすい状況だということが分かります。

※左側の色が濃い方が職場の誰かにカミングアウトしている人。右側がカミングアウトしていない人。

「ストレス」と「やりがい」はシンプルな相関関係でしたが、「人間関係」はとても興味深いグラフになっています。経験者の回答は「非常に悪い」「非常に良好」にそれぞれピークがあります。つまり、職場の誰かにカミングアウトすることは、人間関係を「非常に良好」にすることもあれば「非常に悪」くさせることもある、言うなれば、「両刃の剣」であることを示しています。   実は、性同一性障害者に関する先行研究でも、同様の指摘があります。岡山大学の中塚幹也氏らによる「性同一性障害当事者の就労の現状と課題」によれば、職場でカミングアウトした性同一性障害の当事者のうち、人間関係が「よくなった」と回答したのが22.5%、「悪くなった」5.0%、「どちらもある」35.0%、「変化なし」37.5%でした。

カミングアウトして自らの状況を説明し、それが受け入れられた場合、周囲との信頼感が増し、コミュニケーションが増え、人間関係がよりよくなる。そうした状況は私自身も経験があり、実感として理解できます。しかし、逆に、周囲の人がカミングアウトを受け入れられなかった場合、うわさ話やイジメの対象になり、周囲と壁を作ってしまったり、争いがおきたりして、人間関係が悪化する。こちらも友人たちの経験として、聞いています。これは、当人の問題であると同時に、周囲の人の問題でもあると思います。

LGBTはどんな対応を望むのか?

最後に、職場のLGBT施策への期待についても調査しました。全体の77.1%が「なんらかの施策が必要」と回答し、ニーズが高いのは「同性パートナーへの福利厚生の適用」(67.1%)、「差別禁止の明文化」(44.8%)でした。カミングアウトしている人ほど、LGBT施策を求める傾向が認められました。

「差別禁止の明文化」は、まずは、職場の差別禁止規定のなかに、性的指向や性自認という文言を足すだけですので、LGBT施策に新たな予算を付けるのが難しいという企業は、ここから取り組みを始めるのがいいのではないかと思います。

アンケートの感想欄には、職場での対応だけでなく、学校でのLGBT教育の推進を求める声も多くよせられました。また、メディアにおけるLGBTの扱い方への批判もありました。職場だけでなく、社会全体でLGBTに関する理解を深めることが、当事者達の強い願いだと感じました。この貴重な声、自分の職場ではカミングアウトすることが難しいかもしれない「声なき声」を元に、日本でLGBT施策に取り組む企業を増やし、「LGBTが働きやすい職場づくり」を進めることが、今後の課題です。

LGBTが働きやすい職場というのは、実は、LGBTではない人にとっても、働きやすい職場になるはずです。LGBTの視点で職場を見直すことは、職場の男女による違いを別の角度から検証することにもなり、女性活用やダイバーシティ施策を推進する力になります。

以上、2回にわたって、LGBTと職場に関するアンケート結果の概要をご説明しました。虹色ダイバーシティのホームページに報告会の資料を掲載しておりますので、詳細を確認されたい方は、こちらをご覧下さい。
http://www.nijiirodiversity.jp/ 活動記録/資料/

以上

 

虹色ダイバーシティ(1) 職場で働く性的少数者たち

虹色ダイバーシティ(2) 「性別を変えて働きたい」と言われたら…

虹色ダイバーシティ(3) 海外企業のLGBT対応

虹色ダイバーシティ(4) 日本初、LGBTの職場環境に関する調査(1)

虹色ダイバーシティ(5) 日本初、LGBTの職場環境に関する調査(2)

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虹色ダイバーシティ(10)2014年、LGBTに関する動き

(2013/08/01)