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虹色ダイバーシティ(7) LGBTへの差別的言動は「セクハラ」になります |性的マイノリティの目線から見える社会

タイトル LGBTへの差別的言動は「セクハラ」になります
虹色ダイバーシティ 代表 村木真紀
ホームページ http://www.nijiirodiversity.jp/

2013年の内外のLGBTニュース

2013年はLGBTなどの性的マイノリティの権利について、世界的に大きな前進があった1年でした。主要なニュースをご紹介します。

・イギリス、フランス、ニュージーランド、ブラジル、ウルグアイで同性結婚が可能に。
・米オバマ大統領が2期目の就任演説で「ゲイの同胞たちが完全に平等になるまでは、私たちの旅は終わらない」とスピーチ
・米最高裁が連邦レベルで同性婚を禁止していた法律に違憲判決
・著名人のカミングアウトが進む ジョディ・フォスター(「羊たちの沈黙」などでアカデミー賞を受賞)、ウェントワース・ミラー(ドラマ「プリズン・ブレイク」の主演俳優)、ジェイソン・コリンズ(NBAバスケットボール選手)、ロビー・ロジャース(サッカー選手)など

日本でも、かつてないほど、性的マイノリティがポジティブな形でメディアに取り上げられました。報道の量も質も、明らかに変わったと感じます。

・性同一性障害で女性から男性に性別を変更した方の妻が人工授精で授かった子どもについて、戸籍の記載を嫡出子とする申し立てを行い、最高裁で認められる
・NHK Eテレ「ハートネットTV」がプライド月間の6月に、LGBT特集番組を連続放送
・新聞各紙(読売、朝日、毎日)でLGBTに関する連載記事
・長寿番組「新婚さんいらっしゃい!」にフランスで結婚した男性同士のカップルが登場
・東京ディズニーリゾートで初の女性同士の結婚式
・大阪市淀川区が「LGBT支援宣言」を発表、全職員が虹色ダイバーシティのLGBT研修を受講
・大阪のLGBTイベントに6000人が集まる(関西レインボーパレード&フェスタ!)
・大阪のゲイの弁護士カップルが、朝日新聞の「ひと」欄に掲載

LGBTと企業の関わりについて可視化が進む

LGBTなどの性的マイノリティを支援する企業の動きについても、可視化が進んだ1年でした。

・自然派化粧品の製造・販売会社であるLUSHが、ロシアの反同性愛法に反対する国際キャンペーンを店頭とSNSで行う
・東洋経済のCSR調査にLGBTが初めて調査項目に入り、日本の主要企業の中で、LGBTへの対応基本方針がある会社は114社、何らかの取り組みを行っている会社は80社と発表される
・企業担当者のLGBT勉強会が開催される(7/17大阪 虹色ダイバーシティ主催・共催大阪ガス、11/22東京 Work With Pride主催・会場協力ソニー)
・週刊ダイヤモンドの年末年始の特大号で、100個の未来予測記事のひとつがLGBT(虹色ダイバーシティ村木が執筆) ・米LGBT権利擁護団体が毎年発表する「CEI:企業平等度指数(LGBTに優しい企業) 2014」で日本企業の点数が向上(ソニーと日産が100点企業に)


1a 性的指向による差別の禁止
1b 性自認による差別の禁止
2a 医療保険などを同性パートナーに適用
2b その他の福利厚生を同性パートナーに適用
3a LGBTに関するトレーニングを提供しているか
3b LGBTアライの社内ネットワーク、ダイバーシティ委員会の有無
4  社外のLGBTコミュニティとの連携

(図表:虹色ダイバーシティ)

セクハラ指針の見直しとLGBT

日本ではLGBTに関する法的な整備は遅れており、雇用の場などでの差別を禁止する法律がありません。しかし、2013年にはひとつ、大きな前進があったのでご紹介します。

男女雇用機会均等法の見直しについて、厚労省の労働政策審議会で議論され、いわゆる「セクハラ指針」に以下の事項が追加されることとなりました。(施行は2014年7月から)

・女性から女性、男性から男性へのセクハラも、セクハラであると明示すること
・セクハラの背景として、性別役割分担意識に基づく言動もあること

この議論の過程で、委員から「性的マイノリティに関する差別的な言動もセクハラではないか」という発言があり、厚労省はそれを認める回答をしました。これは私たち、虹色ダイバーシティからも強く要望していた事で、画期的な判断であると思います。
つまり、これからは、職場でLGBTに関する差別的な言動があり、従業員からセクハラだと訴えがあったら、事業主には、他のセクハラと同様に、何らかの措置を行う義務が発生するのです。
これまで、LGBTへの対応は一部の先進企業が自主的に行っていることでしたが、これからは、すべての事業主がセクハラ対策として対応を準備すべきものになったのです。

オリンピック・パラリンピックとLGBT

2014年はロシアで冬季オリンピック・パラリンピックが開催されますが、ロシアは今、世界のLGBTから注目をされている国です。いい意味で注目されているのではありません。未成年者に同性愛をプロパガンダ(宣伝)した者に罰金刑を課したり、同性愛者に国際養子を出さないようにしたり、反同性愛的な法律が次々と成立しているのです。その法律の影響で、国内では同性愛者へのヘイト・クライム(憎悪犯罪)が増加しているそうです。プーチン大統領の狙いは、内政から目をそらし、宗教保守派の支持を固めるためだと言われていますが、隣の国のLGBT当事者としては、身も凍る思いです。  こうした反同性愛的な政策に抗議して、各国の首脳がオリンピックを欠席する動きが出てきています。ドイツのガウク大統領、フランスのオランド大統領とファビウス外相、ポーランドのコモロフスキ大統領とトゥスク首相らが既に欠席を表明しており、米オバマ大統領も開会式、閉会式を欠席するとのことです。国のLGBT施策が、オリンピックにも大きく影響しているのです。
2012年のロンドン・オリンピックは「多様性」に配慮し、LGBTも大活躍したオリンピックでした。開会式、閉会式にはLGBT当事者のアーティストが多数参加し、LGBTであることをカミングアウトした選手は23人となり、過去最高を更新しました。次の夏季オリンピックは2016年のリオデジャネイロですが、ブラジルは2013年に同性結婚が可能となっており、LGBTフレンドリーな大会になることが予想されます。
2020年の東京オリンピック、パラリンピックは、LGBTにとってどんな大会になるのでしょうか?日本はLGBTであっても安心して暮らせる国だと言えるように、国も企業も、今後の6年間でしっかり準備する必要があると私は考えています。

                                           以上

虹色ダイバーシティ(1) 職場で働く性的少数者たち

虹色ダイバーシティ(2) 「性別を変えて働きたい」と言われたら…

虹色ダイバーシティ(3) 海外企業のLGBT対応

虹色ダイバーシティ(4) 日本初、LGBTの職場環境に関する調査(1)

虹色ダイバーシティ(5) 日本初、LGBTの職場環境に関する調査(2)

虹色ダイバーシティ(6) CSR担当者がLGBTに注目、大阪で初の勉強会開催

虹色ダイバーシティ(7) LGBTへの差別的言動は「セクハラ」になります

虹色ダイバーシティ(8) 企業のLGBT担当者になるワークショップ

虹色ダイバーシティ(9) LGBT施策は当事者以外の人にも効果あり?

虹色ダイバーシティ(10)2014年、LGBTに関する動き

(2014/01/27)